Shinsuke Yonezawa

5thコラム:沁み入るワインがお好きなすべての方に

〜 For everyone who likes wine that deeply jumps into your heart 〜

2017年4月12日 更新
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最近とてもよく聴いているアルバムがある。

もう自分の中では名盤の仲間入りをしているのだが、商業主義音楽に毒されていると、地味〜ぃにしか聴こえないかも知れない。

だけどこういう音こそ聴いて貰えたらなぁ、と思います。

十数年前に、アルバムデビューしてそんなに経ってない頃の何作目かのアルバムを知り、ハマって以来彼女の音源を買うのはとても久しぶり。

シンプルなピアノの弾き語りだったようなそのアルバムは派手さは無くてもじんわり語りかけてくるいいアルバムだったのです。

その頃に店の周年だったか、店が終わってから贈り物を自転車に乗って大阪のミナミから尼崎の塚口まで届けに来てくれた同世代の店主がいた。

遠い道中ちょっと道に迷いながら未明に着いた彼に少し休憩していってくれと、そのアルバムをかけたのだった。

そのあと少し経ってから彼の店に行くと、そのアルバムがかかっていた。

気に入ってくれて購入したようです。

自分が好きなものを好きになってくれて、手に入れるまで至るというのはワインと同じでとても嬉しいもの。

「みんなの歌」的な良さがあるね、と彼は言う。

そう、彼女のそのアルバムは化粧っ気のない地味なものなのだが、静かに語りかけてくる「健康さ」があった。

記憶を辿るとあれからもうそんなに時間が経っているんだ、と思う。

それから彼女が何枚のアルバムを出したのか、どんな人生を歩んで来たのか知らないが、ふと今ここで久しぶりに再会したのだ。

浜田真理子という人の今年になってリリースされたニューアルバム、『Town Girl Blue』
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シンプルな弾き語りを中心に収められたこのアルバムは、以前の「みんなの歌」のような健康さはもう無い。

不健康になったわけではないが、癖のない声は変わらずより深〜く心のひだひだに沁み入るような楽曲が散りばめられている。

1曲目「彼方へ」から深夜に1人で聴いていると泣いてしまうくらいに心に飛び込んでくる。

情感を纏った歌詞は、静かな夜に自分の精神を外から内へと移してくれる。
http://youtu.be/N1EGZeHdIPU

聴いていると心の健康が取り戻せそうな浄化作用のある、バランスよく穏やかで淡々と、だけれどもじんわりくる構成。

これはこのコラムを読んでくださっている大方のみなさんが大好きであろう、身体にじんわりと沁み入るワインとの相性が、お察しのとおりええのです。

たまらんなぁ。

みんなでワイワイ、ではなく1人飲みの静かな夜に限定する音楽。

そんな夜にグサリと来る。

そしてこのアルバムのもう一つの特徴は、最後の曲が終わったあとの静寂。

この静寂の余韻がもう、たまらなくいいのです。

こんなに素敵な空白の余韻をじんわり噛み締め味わえるアルバムはいまだかつて聴いたことがないのです。

なんなのでしょうね?
これ。


どうしてこんなにいいのかはわかりません。


この静寂を味わってもらうためにアルバムが存在してるような。


謎です。
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最後の曲「春の夜の手品師」は、なんとあがた森魚さんの曲のカヴァーでした。
そして東京のナチュラルワインボス、勝山さんのお薦めで知った和歌山那智勝浦の還暦メジャーデビューのブルースギタリスト、濱口祐自さんの曲のカヴァーも。
ピンとくる人もいるかもしれませんが、プロデュースは久保田真琴さんです。
聴き終えたあとのみごとな静寂の美味しさは、彼の素晴らしい仕事の賜物なのでしょうね。
※因みに健康のためにナチュラルなワインを飲んだり音楽を聴いたりはしてません(笑)
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2017年4月12日
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Shinsuke Yonezawa Shinsuke Yonezawa

尼崎、塚口にある尼崎最古のワインバー・ナジャのオーナー/シェフ/ソムリエ/DJ。