Takuro Koga

5thコラム:スタンプラリーはおしまいにしよう

Let's just end Stamp Rally

2017年5月31日 更新
前回、ラジオから流れる曲に耳を澄ませるように、偶然のワインとの出会いを楽しんではどうか、と書いた。

その後にアップされた米沢さんのコラムも、偶然か、その話に呼応するような内容だった。

ワインバーをやっていた頃、いろいろと試行錯誤を経て、 最終的にグラスワインが常時9種類に落ち着いた。
スパークリング1種、白4種、赤4種。

9種類が多いのか少ないのかは自分ではよくわからないけれど、
「こんなに開いてるんですか!」
と言われた事は、僕の記憶ではただの一度もない。

逆に「これだけ?」と言われる事ばかりだった。

世界中のワインバーのバイザグラスが平均何種類くらいなのか、 そんな統計などどこにも存在しないと思うが、 「これだけ(しかないのか)?」と言われるたびに戸惑いを感じていた。

何種類あれば満足するんだよ、と。

だいたい、そういう余計な一言を浴びせてくるのは一見のお客様で、 いざボトルを並べてみると、 「あー。これは飲んだ。これも飲んだ。だからこれとこれは(選択肢として)ナシでー」 と始まるのが、おきまりのパターンだった。

どうして1度飲んだワインは選択肢としてナシなんだろう。。

「好みじゃなかった」のなら仕方ないが「飲んだことあるから」というのは。。

そうやってスタンプラリーのように、
飲んだことないワインを埋めていって、一体何になるんだろう?

そんなくだらないカードは、 たとえスタンプがいっぱいになっても(実際にはありえないが)、何の特典もない。

もしもこれを読んでハッとした人がいたなら、今すぐラリーから降りた方がいい。
その方がずっと楽になれるし、ワインを楽しめると思う。

いい曲は何度聴いてもいいものだ。

1回きりの関係なんて、虚しいじゃないか。

ワインをお客様にサービスする最前線にいるまともな人達は、 ワインを「育てている」し、コンディションにもめちゃくちゃ気をつかっている。 (少なくとも、僕が親しくしている同業者の友人達はそうだった)

僕がやっていた店はピーク時は在庫が1,500本あり、 ヴィンテージに関わらず「今、美味しい」ものを選んで開けていたつもりだ。
冷蔵庫も3つの温度帯に分け、3°C、8°C、12°C、常温を使い分けていた。

ワインバーは寿司屋に似ていると、昔、ブログに書いた事がある。
次回はその話をしよう。

例えば、寿司屋で極上のイカが出てきたら、
「あー、イカは食べた事あるんでナシで」って言うだろうか?

ワインを楽しみたいなら、その野暮なスタンプカードをさっさと捨てる事だ。
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2017年4月5日
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Takuro Koga Takuro Koga

‘09年5月、東京・幡ヶ谷でヴァンナチュールと日本ワインを軸にしたワインバーKinasseをOPEN。 ‘16年3月、地元熊本へ戻り、現在はワインショップQuruto店主。ブドウ栽培・醸造、共に見習い。