Takuro Koga

15thコラム:同じ阿呆なら踊らにゃ損だろ

〜 We are all fools alike, so why not dance? 〜

2017年11月20日 更新
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毎年この季節になると、なんだかモヤモヤとした気持ちになる。

ボジョレー・ヌーヴォー。

今さら説明は必要ないかも知れないが、ボジョレー・ヌーヴォーとは、 11月の第3木曜に解禁される、フランスのボジョレー地方で造られる新酒のことだ。

日付変更線の関係で、もちろんボジョレー現地よりも早く、 世界でもほぼ1番くらい(本当の1番はキリバス共和国みたいですね)に、 第3木曜を迎えるというのが良かったのか、 もともと新酒や初物をありがたがる慣習があるからか、 とにかく爆発的に日本で流行った。

今じゃコンビニやスーパーの棚にだって並んでいる。

お酒に限った事ではないが、爆発的に流行るということは、 販売チャネルも広がり、粗悪品や廉価品も多く出回り、 その商品がコモディティ化していくということだ。

ご存知の通り、ボジョレーヌーヴォーも、 随分と価値やイメージが低下してしまっている。

消費者も「ふーん」くらいにシラけてしまっている人が多い。

が、それでもこの日は、 日本中の大半の人がワインに興味を持ってくれる日であることに変わりはない。 航空便で日本に到着した際にはTVのニュースにだってなる。

クリスマスもあれば正月もある、無宗教の日本人にとっては、 ハロウィンなどと並んで、皆で集まって楽しむ1つのイベントにできる日なのだ。

生まれて初めて飲むワインが、ボジョレー・ヌーヴォーの若者も多いだろう。 1年のうちにワインを飲むのは、 ボジョレー解禁日とクリスマスくらい、って人も多いだろう。

これって、結構スゴいことだと思わないか。

ここで美味しいワインを飲む体験をさせてあげられれば、 もっとワインを知りたいとか、別のワインも飲んでみたいとか、 思ってもらえるかも知れない、チャンスなのだ。
なのに、この季節にモヤモヤとした気持ちになるのは、 (だいたいワイン業界関係者が)
「あんなのワインじゃない」的なことをエラそうに投稿しているのが、 SNSなどで散見されるからだ。

「ヌーヴォーなんてワインじゃない。(自然派なんてワインじゃない)」 「俺の好きなワイン以外は認めない」 だなんて、なんと多様性に欠ける不遜な態度なんだろう。。。

他にも、

「そもそもボジョレーじゃなくてボージョレですよ」 とか、

「航空便で持ってくるので高いんですよ」 とか、

うんざりですよ。アンタ何様ですか?

だったらクリスマスにレストランに入って行って、 「今日はカップルの日じゃないですよ、キリストの生誕を祝う日ですよ」 って言って回れよ。

「キリストじゃなくてクライストですけどね」
って付け加えてな。






2017年11月20日
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Takuro Koga Takuro Koga

‘09年5月、東京・幡ヶ谷でヴァンナチュールと日本ワインを軸にしたワインバーKinasseをOPEN。 ‘16年3月、地元熊本へ戻り、現在はワインショップQuruto店主。ブドウ栽培・醸造、共に見習い。