Takuro Koga

7thコラム:遠くのペイラより近くのフジマル

〜 A Near "FUJIMARU" is Better Than a Far-winery "PEYRA" 〜

2017年5月31日 更新
いわゆる自然派のワインが好きな人々の間で、
未だにエチケットを見ると「オォォォ!」となるワインがある。

ドメーヌ・ペイラ。

フランスのオーベルニュで1999年に3人の仲間が立ち上げたドメーヌで、 2人が去り、最終的に残ったステファン・マジョーヌが06年までワイン造りをしていた蔵だ。

ステファン・マジョーヌが最近醸造したワインが、 こないだ日本に入ってきて「元ペイラ」でちょっと話題になった。 同じく「元ペイラ」で、ジャン・モーペルチュイを記憶している人も多いだろう。

還元臭がキツいものも多かったけれど、
ピュアで、旨味がじんわりと口中で溢れる、淡いガメイの虜になった人は数知れない。
僕もペイラは大好きだ。 これを読んで飲みたくなった人は、飲めるお店を探してみるといいかも知れない。

が、正直もう僕自身も1本も持っていないし、 都内のレストランでも出玉は相当少ないだろう。 いつまでも伝説のワインの話をしていても、飲めないんじゃ仕方ない。

それより現存するワイナリーの話をしよう。

大阪の島之内に、フジマル醸造所というワイナリーがある。設立は2013年。

今ではすっかり有名人になってしまった藤丸さんが、 アカデミーデュヴァンの東京青山校で、 1期だけ自然派ワインの講座をやっていた事がある。 ワイナリー設立の2年前、2011年の事だ。

実は僕はこの講座の受講生だった。 当時やっていたワインバーの定休日に講座があったので、運良く受講できたのだ。

この講座で、藤丸さんが初めて栽培と醸造を手掛けたワインを飲む機会があった。

キュヴェパピーユ マスカットベリーA 2010。

カタシモワイナリーさんを間借りして造った赤ワインで、 今はなき堂ノ内という畑で獲れたマスカットベリーAを使ったものだった。

一口飲んで衝撃を受けた。。

「これは。。。(まるで)ペイラじゃないか!」と。

いいのか悪いのか、軽い還元も含めて、そっくりだった。

このワインを僕に売って下さい!
とお願いをするところから、フジマルとのお取り引きがスタートした。

マスカットベリーAとガメイは似ているなぁという印象を持つようになったのも、 このワインがもしかしたらきっかけだったかも知れない。

以来、藤丸さんの造るワインに魅せられ、 ワイナリー設立前にメーカーズディナーを企画したが、 まだ「藤丸?誰それ?」的な反応で、 席がなかなか埋まらず悔しい思いをしたのが懐かしい。

買いブドウのサンセミヨンも衝撃的だったし、 自社畑の岩崎谷のメルローの2年目、2014ヴィンテージも衝撃的に美味しかった。

ちなみに今回のコラムは、
「自分なりのお気に入りを見つけて欲しい」
という事が書きたかったのだが、うまく着地できていないかも知れない。

が、とにかく僕にとっては「遠くのペイラより、近くのフジマル」なのだ。

今夜食事に行って、もしもペイラとフジマルのベリーA’10を並べられ、 「どちらにしますか?」と聞かれたらどうするか、だって?

そんなの決まってるだろう、野暮な質問はやめてくれたまえ。
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2017年5月3日
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Takuro Koga Takuro Koga

‘09年5月、東京・幡ヶ谷でヴァンナチュールと日本ワインを軸にしたワインバーKinasseをOPEN。 ‘16年3月、地元熊本へ戻り、現在はワインショップQuruto店主。ブドウ栽培・醸造、共に見習い。