Takuro Koga

2ndコラム:ワインの素人、ワインを知ろうと

Wine amateur, Trying to know wine

2017年5月31日 更新
2009年の5月26日に、
渋谷区の幡ヶ谷という場所で「キナッセ」というワインバーを始めた。

それから1年ほどして書いた文章を加筆修正したものを掲載する。

———————————————————————————————
 (2513)

「やっぱり昔からワインがお好きだったんですか?」

最近、お客様からよくこう訊かれる。

僕は決まってこう答える。

「いいえ。実は僕はワインが大嫌いでした。」

次の質問もわかっている。

「え? それじゃあ、どうしてワインのお店なんかやっているの?」

と、こうだ。


とても思い入れのある葡萄の品種がある。

ソーヴィニョン・ブランだ。

九州出身の僕は、と言うか僕の周りには、「オトコは黙って、焼酎ロック」的な考え方がいまだに色濃く残っている。

ワインなんか注文しようものなら、
「なんやコイツしこっちか!(なんだコイツ格好つけやがって!)」となるのがセキノヤマである。

ワインのイメージは、
「高い」「知識がないと馬鹿にされそう」「翌日、頭が痛くなる」など、ネガティヴなものが多かった。

もちろん、偏見だけど仕方ない。
世の中の大半は、ウソや誤解、偏見で成り立っているんだから。

それはまぁいい。

とにかくワインなんて数えるくらいしか飲んだことがなかった。

銘柄もクソもない、白か赤の二択しかメニューにないような大衆居酒屋で、誰かが血迷って注文したものをイッキ飲みするような、品のない飲み方だ。
当然、翌朝はヒドい二日酔いだった。

そんな僕が、ワインを飲むようになったきっかけ、それが1杯のソーヴィニョン・ブランだった。

あれは2007年の、夏の終わりのすごく暑い夜。

僕は、友人のマサさんと渋谷のとある立ち飲み屋にいた。
僕の手元には焼酎のロック、マサさんはグラスの白ワイン。

上京してからできた数少ない友人の彼が、美味しそうに同じものを何度もおかわりしているのを見て、俄然、興味がわいた。

「…マサさん、それ、そんなにウマイんですか?」

周りに九州人はいない。
格好よくトーキョーの立ち飲み屋で、ワインをキメるなら今だ(笑)

飲んでみれば、とグラスを渡され、ひとくちゴクリとやったその瞬間が、僕のターニングポイント。

それがなければ今の僕はないし、キナッセもないだろう。

「ウマイ!なんて爽やかで飲みやすいんだ!」

数分後に、僕も同じものを注文したのは言うまでもない。

その時に飲んだ白ワインがソーヴィニョン・ブランを使ったものだった。
どこのワイナリーかは覚えていないが、フランスのサンセール地方のものだと後日マサさんから聞いて知った。

こんな美味しいお酒を、飲まず嫌いで過ごしていたなんて、人生、何て損しているんだ!

その時に素直に「もっと知りたい」と思った。
恋愛と同じで、そう思ったその日から、ワインのことが気になりはじめた…。


———————————————————————-

誰にでもきっかけがある。

ちなみにこの時行ったお店は、
立ち飲みブームの火付け役となった伝説のお店「Buchi」だった。

Buchiとマサさんが、ワインを好きになるきっかけを作ってくれたのだ。
そして「今度は自分が誰かのきっかけになれたらいいな」と思い、2年後にワインバーを始めたのだ。
キナッセというお店は、
ワインの素人だった僕が、ワインを知ろうとあがいた軌跡そのもの。

そして何の因果か、この10年後となる今年(2017年)、ソーヴィニョン・ブランという会社を立ち上げたマサさんと一緒に、僕はwinyを始めることになったのだ。
 (2512)

2017年2月22日
6 件

このワインをおすすめしている人

Takuro Koga Takuro Koga

‘09年5月、東京・幡ヶ谷でヴァンナチュールと日本ワインを軸にしたワインバーKinasseをOPEN。 ‘16年3月、地元熊本へ戻り、現在はワインショップQuruto店主。ブドウ栽培・醸造、共に見習い。