Takuro Koga

8thコラム:長崎の夜

〜 Unforgettable Night in Nagasaki 〜

2017年5月31日 更新
先日、有志一同、総勢9名で長崎へ行って来た。

目的はただ一つ。

「アンペキャブル」で食事をすること。 開業16年のベテランシェフ、大坪慎一の長崎フレンチを堪能するためだった。
アンペキャブルはナチュラルワインを開業当時から扱っており、 慎ちゃんは九州では貴重な、業界の生き字引的存在だ。

毎年、熊本のナチュラルワインの祭典「ナチュランネ」にも力を貸してもらっている。

料理の話は野暮ったくなるので、書かない。 と言うか、僕は食のライターではないので、巧く書く自信がもう一つない。 が、とにかく僕は彼の料理の大ファンで、 九州一の洋食の料理人だと思っていることだけは書いておこう。
この日の料理も本当に素晴らしかったのだが、ワインがまた素晴らしかった。。
今回、僕たちのために慎ちゃんが用意してくれていたワインは、 「およそ10年以上の熟成を経たもの」ばかりだった。

- 来日中のカプリアードのキリッと冷えたペティアンで乾杯!(これだけは若いヴィンテージ)
- コサールのサンロマンブラン(マグナム)’07
- パパンシュヴァリエ’00
- ダールエリボのクローズエルミタージュブラン カリエール’07
- ダールエリボのクローズエルミタージュ レ ブラン デ バティ’07
- グラムノンのポワニエドレザン(マグナム)’07
- もうすぐ来日予定のパカレのシャンボールミュジニー プルミエクリュ’04

など、錚々たる顔ぶれだったが、 なんとこの日、ペイラのワインが出たのだ。しかも2種類も!

VV’05 と SG’04!

どちらも涙が出るくらい美味しかったのは言うまでもない。。。

「こないだタクローがコラムに書いとったやろ?飲みたかったとやろが、本当は?」

と、慎ちゃんが笑顔で惜しげもなく抜栓してくれたのだが、 アンペキャブルも、ペイラは最後の1本だったみたいだ。。

大切な残り1本を僕が飲んでいいのか、なんだか申し訳ない気持ちもあり、
「遠くのペイラより、近くのフジマルじゃないのかよ!」 と仲間に揶揄されたりもしたが、やっぱり胸が熱くなる夜だった。

ペイラが美味しかったのよりも、慎ちゃんの心遣いが嬉しかったのだ。

好きな造り手のワインのポテンシャルを信じ、 貯蔵スペースと保管コストをなんとか捻出して大切に5年10年と寝かせ、 「えー。だってその方が美味しいし、造り手もお客さんも喜ぶやろ?」 とサラッと言えるような飲食店が、今、果たして何軒あるのだろう。

そして、予約してくれたお客の好みを把握し、 その日のためにセラーから大事なバックヴィンテージを1本探して抜き出し、準備しておくのだ。

最高の「おもてなし」のおかげで、忘れられない夜になった。

今回は、
「前回あれだけエラそうに書いたのに、ペイラ飲みました、ごめんなさい」
と言う謝罪文であると共に、

スタンプラリーを辞めた方がいいのは、ワインだけじゃなく店選びも同じで、
「常連」と言われるくらいに通うような、
お気に入りの一軒を早く見つけて欲しい、ということも伝えたかった。

お気に入りの一軒を見つけて足繁く通い、
お店の人とじっくりと関係を築いていけば、
上述のようなエピソードが、きっとあなたにも訪れるだろう。

さて、今夜はどこに行こう?
 (4198)

2017年5月28日
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Takuro Koga Takuro Koga

‘09年5月、東京・幡ヶ谷でヴァンナチュールと日本ワインを軸にしたワインバーKinasseをOPEN。 ‘16年3月、地元熊本へ戻り、現在はワインショップQuruto店主。ブドウ栽培・醸造、共に見習い。

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