Takuro Koga

20thコラム: 大好きが1番のマストアイテム

〜 Your Love Is Important 〜

2018年4月23日 更新
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ワインバー時代、
お客様に美辞麗句を並べてそのワインの良さを表現されるよりも、「美味しい!」や「おかわり!」こそが、シンプルに一番響く、嬉しいリアクションだった。

8~10種程度開いてるグラスワインで、
ただでさえスタンプラリー的な飲み方の人が増える中、 思わず同じものを2杯飲んでしまうほど好きだった、ということだ。

そんな嬉しい時に、
「貴重な1杯なので、他の人に譲ってあげて下さい」 なんて、気難しい顔で言う店主はいない。

破顔一笑、
「おお!これ、いいですよね!? 僕も大好きなんです!!」 と、美味しさを共有できた事を喜び、胸の奥でガッツポーズするのだ。

ところで、ワインショップQurutoに遠方から来た人に、 「熊本のナチュラルワインシーンはどうですか?」としばしば聞かれる。

正直言って、僕自身はまだまだ「夜明け前」程度だと思っている。

飲食店さんに限って言えば、
懇意にさせていただいている取引先が県内に10軒くらいある。

この数字を多いと見るのか少ないと見るのか、
人によって意見が分かれるだろうけど、
10軒あるだけで充分にありがたい事だと感じている。

そして、急に増やすつもりも全くないので、僕は営業には一切行かない。

実は新規の飲食店さんは結構お店に来る。
「お取り引きがしたい」と。

その都度、僕は尋ねる。
「こういうワイン、好きなんですか?」と。

その時のリアクションを見ている。

その時に、
「お客さんに『自然派ないんですか?』ってよく言われるんです」とか、
「良さがよく分からないんです」とか、 ごにょごにょと言葉を濁したりする方は、必然的に続かない。1度か2度で来なくなる。
もしくは、申し訳ないがこちらから、飲食店としてのお取り引きはお断りする。
(個人的に買うのは大歓迎。何本か飲まないと良さが分からない事もあるかも知れないし)

だって飲食店って、
自分が『美味しい!』『食べて(飲んで)もらいたい!』と思ってるものを、 お客様と共有したい、ってのが仕事の原点でしょう?

「このワイン、僕はあまりピンとこないんですけど」 ってグラスに注がれたら、 お客さんも「はあ?じゃあお店で出すなよ」ってなるでしょう?

ただただ「好きなんです!」「美味しいと思います!」が、欲しいだけ。
でもそれって、最低限の、前提条件じゃないだろうか?

その一言が出ないのは、
口ベタでもなんでもなくて、そう思ってないだけ。
そう思ってないうちは、本気でお付き合いはできない。

不遜かも知れないが、
僕は大手メーカーのビールを配達するだけの御用聞きのような酒屋ではない。

これだけ趣味や嗜好が細分化されている世の中で、
こちらも別に、全ての人に好きになってもらいたいわけじゃない。

自分から交際を申し込んでおいて、
「私のこと、好きなの?」
って聞かれて、
「良さがまだよく分からないんです」
「みんながカワイイって言ってるんで」
って答えて、付き合えますか?
無理ですよね、普通?

ものすごくシンプルな事だけれど、「好き」って本当に大切なこと。

あるいは全ての仕事に共通する話かも知れないけれど、自然派なのかどうかよりも、まずは、そこから、始めませんか?
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2018年4月23日
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Takuro Koga Takuro Koga

‘09年5月、東京・幡ヶ谷でヴァンナチュールと日本ワインを軸にしたワインバーKinasseをOPEN。 ‘16年3月、地元熊本へ戻り、現在はワインショップQuruto店主。ブドウ栽培・醸造、共に見習い。