Shinsuke Yonezawa

14thコラム:時を堪え忍んだお手頃ワインの密やかな楽しみ

〜 Secret Fun with Daily Wine That Endured Time 〜

2017年10月31日 更新
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ここ最近、長らく不耕起だった店の奥地を掘り起こして、出土した前世紀のワインをぼちぼち満月の日や、店で満ちたときに開けている。

歳をとると一年というのはあっという間。世紀が変わると沸き立ったミレニアムから、はや17年。同世代や先輩諸氏は身に沁み感じ入られていることでしょうが、まさに光陰逝水の如し。

世紀の変わり目にケースごと封印したワインも、おっとどっこいまだ開封されずにあったりする。
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決して高価な長熟向けワインではなく、「世界」ではこんなもの寝かせておかないであろう手頃なワインを寝かせてみるところに誰も見たことのない発見がある。
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先日も評判だったこんなものや、
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こんなものや、
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まだ陽の目を見てないこの子たち


三重の四日市にもそんなことをしている魅力的な飲食店(flapper)の人(O澤氏)がいてるのだ。

大阪のワイン輸入会社(I)の人(F田氏)もプライベートでは、まさかのヤフオクなどで落としてきたネゴシアンボルドーの白などのお手頃ワインのウンと熟成したものを、これは当たり〜とたまにSNSで上げているが、なかなかこういうのも面白がれるのは素敵な趣味だなと思う。
スーパーグランヴァンのワイン会などを永くやっている方がこれなんだから。

グランヴァンが長期熟成で美味くなっても当たり前だし、面白くもなんともないではないか? (というと言い過ぎだが)
あれ⁉︎こんなはずじゃ、、ってときには目も当てられないが、これもよくあることで。。

バブリー(泡沫)兄さんや姉さんにはそれでも良かろうが、普通の人々には入水ものだ。

えーっ、こんな手頃なものがこんな熟成に耐えうるんだー、と楽しめるし、まさかの悦びで嬉しくなっちゃう。

楽悦嬉の三位一体は財布に優しくジッと堪え忍ぶだけだ。

意外性こそ感動する。

ワインの世界的権威マスターズオブワインのジャンシス・ロビンソンの記事で欧米の若いMW仲間がヤフオクみたいなところで、「目立たない古いワイン」を安く買って楽しんでるというのにジャンシスもびっくりしていたが、意外とそういうところにも信頼のおけそうな出品者がいるのだろう。MWというワインの凄い権威者の中でも頭の柔らかい人たちの先端は、僕たちが信じられないようなことをしている。
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オークションで偽物だらけのグランヴァンを摑まされるよりよっぽど精神衛生上良いではないか。

「目立たない古いワイン」には玉石混交の市場でも健全なのだ。

ハズレてもキズは浅いし楽しい。

普通の人々の密やかな楽しみとなる。

ワインの在庫というのは、きっちり管理すればするほど面白くない。
手頃なものはさっさと浮上させてすぐに売り飛ばしてしまうからだ。
飲食業/輸入/販売の人たちから聞こえてくるぼくの大嫌いな言い回しに「はよ、はいてまえ!」という言葉がある。
漢字では「捌いてまえ」だが、ぼくには「掃いてまえ」に聞こえる。
“生産者” にも “ワイン” にも “飲み手” にも愛がない残念な言葉だ。信用できない。

世知辛い世の中、なかなか在庫を持てるスペースも都会では限られ、トイレスペースと同じように削られる。
そしてどこも小さなセラー1、2台でやりくり上手になる。それは経営という側面からみると素晴らしいことかも知れない。最小限の在庫でキャッシュフローは良くなるだろう。
しかし、今やネットやSNSで情報は瞬く間に世界を回り共有される故、リストもどこも似たり寄ったりで個性を出しにくい。ごく一部の人が握る情報で個性を出せたのは遠い昔の話。

入荷した在庫は落ち着かす暇もなく、もうその日のうちから売ってしまう。
インスタ映えする写真を撮ってさっさとアップすれば最先端ワインを飲ませる店をアピールできるが、「大事に輸入したワインを落ち着かせないままお客さんに出すなんて!」とインポーターから要注意店と思われているかも知れない。
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余裕のあるときにフローを在庫化しておけば精神的にもとても楽なのです。蓄えは力哉。



しかし。
ナジャは在庫が多過ぎる。。
軽やかな世の中に重厚長大。



こんな在庫もあったりして、どうしようか?
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Shinsuke Yonezawa Shinsuke Yonezawa

尼崎、塚口にある尼崎最古のワインバー・ナジャのオーナー/シェフ/ソムリエ/DJ。

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