Shinsuke Yonezawa

16thコラム:突如紡ぎだす、葡萄酒の赤い糸。

〜 Not Winemaker Making Wine, Wine Making Winemaker ! 〜

2018年1月4日 更新
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先日東京にイベントで出向く機会がありまた。

国連大学の中庭で昼間に行われるone love , wine loveというワインイベントの2回目です。そちらにこのサイト、winyでブースを出すので参加しませんか?というオファー。

気安く返事はしたものの、詳細を知るにつれてワインの出店ブースは日本の生産者か、インポーターだけだと知り、これは飲食店からの出店はいろんな意味で太刀打ちできないなと感じ、どうしようかな?参加無理だな、辞めておこうかと悶々と悩む日々。

当店にあってインポーター、生産者にないものはなんだろう?
実は灯台下暗し、簡単なことでした。

熟成ワインです。
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こちらにはまだまだたくさんのそういったワインがあります。
しかも20世紀のワインでそんなに高価ではないラインナップもまあまあ量がある。
これだ!、と。

これに特化すれば生産輸入側のブースに負けないんじゃないか?
大事に置いていたそのようなワインを一気に出すのはもったいない気もしたのですが、えーい、勝負じゃ!と。

結果 「90年代熟成ワイン」と銘打ったわかりやすくキャッチーな展開も手伝ってほぼ完売御礼、大成功だったのです。
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考えてみれば、量は少しとはいえ1コイン(400円)か2コインで20年前後熟成のワインがいろいろ飲めるイベントワインブースなんて世界中さがしてもたぶんここにしかないだろうから、そうなるのは必然だったかもしれません。

前置き長くなりましたが、ここからが本題です。

今回のワインをセレクトした中にナパの1995年のメルロがありました。
これはぼくが10年ちょっと前に7、8本手に入れたもので当時すでに10年ほど経っていたものです。まだ数本在庫があったので東京に持って行こう、と。
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シルヴァラド ヒルズ セラーズ 1995 メルロ。

会場でそのワインを提供していると、上品なご婦人が「これ、私の主人が初めて造ったワインです!」

へぇ〜!、と驚きながらもそのときブースでは行列が出来始め、ゆっくり話しもできなかったのでした。

今はどうされてるのだろう?と思いながら。
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ところが時はSNSの時代。
こういう出逢いが立ち消えになることなく、スルスルと間髪開けずに造ったご本人と連絡がとれ、なんとまあ、スルスルとイベントの翌週にはたまたま関西で所用があり、ナジャに来ていただける運びとなったのでありました。

「現在、市場在庫としてあの時代のワインが残っていることが非常に驚きでした。」

ご自分でももうお持ちでない、ご自身でワインを造られた最初のワイン。
そのワインにお礼を言いたいとのことです。

22年の時を経ての邂逅です。
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ご自分でコルクを開栓したいということでカウンター越しに手渡しました。


感慨深いだろうなぁ。。


この方、今は山形にある 高畠ワイナリーで醸造長をされている川邊久之氏。

熊本ワインの立ち上げでもサポートに行脚されていた方なのです。

東京でのwinyのブースでは一緒にQURUTO古賀さんの仕込んだ熊本ワインの試飲販売。
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なんだか繋がりますねぇ。。


ナジャから帰られたあと、深夜の川邊氏の投稿をここに抜粋させていただきます。

『今の仕事仲間と飲んで思ったというか、醸造家人生30年目に気付かされたことは?
醸造家がワインを創っているのではなく、ワインが醸造家を創っている!
ということ…

Not Winemaker Making Wine,
Wine Making Winemaker !

僕がワインを送り出したんじゃない、ワインが僕を送り出したんだった!
ということ…
30年目の遅いようで早い時期に、オイラに教えてくれて有難うございます。

22年前のあの時、自分のキャリアの進化を押してくれた、約15,000本のうちから残ってくれた、たった一本のボトル…

素晴らしい縁を紡いでくださり、改めまして心より深く御礼を申しあげます。

ワイン醸造家 / エノログ
川邉久之
Grown by wine』

「醸造家がワインを創っているのではなく、ワインが醸造家を創っている」
けだし名言ですね。

醸造家でなくとも我々ワイン関係者、愛好家の方々の中にはワインに生かされてるなぁ、と思っておられる方、少なからずいらっしゃるんじゃないでしょうか。

ぼくも年々しみじみとほんとうにそう思ってきています。

ありがとうございます。

ワイン関連だけではなく興味深い話が溢れて出てくる氏でしたが、趣味も多彩な方で次回は音楽やヴィンテージクローズの話を聞いてみたいですね。

さて今回の音楽は。
谷村新司の「昴」です。
https://youtu.be/VMhAgFIgfpg

ナパから開拓者の道を邁進された川邊氏に、パリのナチュラルワインの開拓者、エノ コネクシォンの伊藤さんの姿が被ったのです。

フランス、ラングドックからボルドーへ向かう伊藤さんの車中で延々とリフレインされる「スバル」を久しぶりに想い出して。ラングドックの景観と昴のペアリングは最高でした。
昴の持つ意味は検索してみてくださいな。
素敵ですから。








今回、川邊氏が関西に来られたのは大阪国税局主催の生産者向けや取引先での「ワインのオフフレーバー」セミナー講師としてでした。
ナパの想い出のワインが空になったあと、バリバリの理系で現代醸造学の理論的権威でもある氏にナチュラルなワインばかりグラスで開けている中からお奨めするワインに躊躇しているとパスティス(アニス主体のリキュール)を望まれたのにホッとしたのはここだけの話(笑)
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尼崎、塚口にある尼崎最古のワインバー・ナジャのオーナー/シェフ/ソムリエ/DJ。

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