Ryoji Ohgushi

1st コラム:オーストラリアでの白ワインを考えてみた!

Think about white wine in Australia!

2020年5月7日 更新
「そもそも白ワインって?」
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via ©️Wine Folly
そんなの簡単、「白いワインでしょ?」「白ぶどうで造ったワインでしょ?」と思いますよね。

ワインって大体そんな感じでいいと思っているのですが、僕の場合は仕事上ある程度分類したり、説明の際に必要な違いをある程度知っておく必要があるんです。そして掘り下げてみると実は白ワインって結構複雑なんです。

まず白い(透明という方がいいかもしれませんがここでは白とします)ワインというのは間違いではないです。しかしある程度色づいたものも白ワインに分類されますのでそれだけでは無いということが言えます。結構透明なものから黄色がかったもの、うっすら緑のようなものや、すこーしピンクのものも基本白ワインと呼ばれています。


そして白ぶどうから造ったものというのも、それだけでは無いというのが当てはまります。全体量から言ったら少ないのかもしれませんが黒ぶどうから造った白ワインも存在します。よく知られているのはシャンパーニュのブラン・ド・ノワールですね。
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西オーストラリア州グレートサザンにあるブレイヴ・ニュー・ワインのピノ・グリ
ピノ・グリは白ぶどうと呼ばないのでは?という問いも個人的にはあります。

オレンジワインは白ぶどうから造られるけど白くはないし、分類もオレンジワインとされることが多いです。そして色は白ワインっぽくてもスキンコンタクトをして果皮の味わいが出ているとオレンジワインと呼ぶ事も結構あるんです。



「では白ワインとは一体?」
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個人的な意見をまとめると白ぶどうの果汁から造られたワイン、プレスをせずに色がついていない黒ぶどうの果汁から造られたワイン。そして短時間のスキンコンタクトしかしていない白ぶどうから造られたワインもオレンジワインではなく白ワインと呼ばれることが多いと思います。

よくある熟成が進んだ黄色いワインもこう分類すれば白ワインになりますね。

あとは造り手がどう呼ぶかというのも一応付け加えておきます。スキンコンタクトのオレンジワインでもブランという名前をつける人もいるのでその場合はそれは白ワインになる場合もあるかと思います。



「オーストラリアの白ワインにはどんな種類がある?」
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オーストラリアの白ワイン(実際は赤白問わず)は基本的にはフランス系の品種が中心です。シャルドネ、ソーヴィニョンブラン、リースリング、セミヨン、ピノ・グリが主な品種だと思います。

そのほかには、マルサンヌ、ルーサンヌやゲヴェルツトラミネール、ヴェルデーリョ、グリューナー・ヴェルトリーナーなどは上の品種よりは少ないですがそれなりによく見かけます。

そしてフィアーノやヴェルメンティーノはナチュラルワインの造り手を中心に最近では美味しいものが結構ありますし、ジュラ以外では珍しいサヴァニャンも少ないですがそれなりにあります。マスカット系も従来は甘い安価なワインになることが多かったですが、ナチュラルワインの中にはオレンジワインになることが多いですが美味しく香り高いものに出会うことができます。



「オーストラリアの白ワインの特徴とは?」
オーストラリアはやっぱり自由で多様なワイン造りが行われているのが大きな特徴だと思います。とは言えある程度産地ごとに代表する品種やスタイルはありますのでまずは一般的な白ワインの特徴を産地や品種の話を交えて話していきたいと思います。

そして、ちょこちょこ僕の見解も織り交ぜてお話していきたいと思います。


〜ハンター・ヴァレーの辛口セミヨン〜
まず、最初に思い浮かぶのはセミヨンです。セミヨン?そんなメジャーじゃなくない?と思うかもしれませんが僕の住むシドニーから1番近いオーストラリアで1番歴史のある産地で知られるハンター・ヴァレー(Hunter Valley)ではとても重要な品種なんです。

ハンターヴァレーのセミヨンは多くが辛口で造られ、オーストラリアではとてもメジャーでハンターセミヨンというのは1つのブランドになっています。ハンター・ヴァレーに行くとほとんどのワイナリーで造られているくらい主要な品種です。

キリッとドライなものが一般的ですが、熟成させて黄色く変化したセミヨンもワイン好きには人気です。個人的には好きなものは少ないですが、歴史もありオーストラリア 、特にシドニーでは人気のあるワインの1つです。

ちなみに他のエリアに行くとほとんど見ることがないので、それも大きな特徴だと思います。

個人的に好きな造り手をあげるとハンター・ヴァレーのハーカム・ワインズ(Harkham Wines)がまず思い浮かびます。あまり好きなワイナリーのいないこのエリアでナチュラルワインといえば彼らがまず思い浮かびます。ハンター・ヴァレーを代表するセミヨンとシラーズを中心に栽培しながらも、他のワイナリーとは違うナチュラルなアプローチと酸化防止剤無添加はこのエリアでは特に貴重な存在です。

他の州で見ると南オーストラリア州のガイアーワイン(Geyer Wine Co.)はスキンコンタクトをしたオレンジワインですが、とても好きなセミヨンのワインを造ります。

セミヨンに関連することで言うと、西オーストラリア州に行くとソーヴィニョン・ブランとのブレンドがとても盛んで、産地を代表するワインの1つとなっています。


〜ほとんどの産地で見られるシャルドネ〜
シャルドネはご存知の通り白ワインを代表する品種で、造られている産地もとても多いです。

もちろんとても重要な品種で、安価なものからプレミアムなものまで幅広いのはシャルドネの大きな特徴です。

代表的な産地で言うとヴィクトリア州のヤラヴァレー(Yarra Valley)やモーニントン・ペニンシュラ(Mornington Peninsula)がよく知られています。この2箇所はもちろん良いワインに出会えますが、個人的にはヴィクトリア州は全体的に良いシャルドネが多いと思っています。

主な造り手でいうと正直沢山いるので難しいのですが、ヤラヴァレーのマック・フォーブス(Mac Forbes)、ボバーワインズ(Bobar Wines)、モーニントンペニンシュラのアヴァーニ(Avani)、ケリー・グリーンズ(Kerri Greens)。そしてピレニース(Pyrenees)のラッタ・ヴィーノ(Latta Vino)も好きなワイナリーの1つです。パトリック・サリヴァン(Patrick Sullivan)やジョシュア・クーパー(Joshua Cooper)などもナチュラルワイン好きの間では有名ですね。
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西オーストラリア州のマーガレット・リバーも有名なシャルドネの産地です。一般的に知られているワイナリーはシャルドネを売りにしているところが多くイメージも良く人気も高いです。このエリアのシャルドネで有名なワイナリーは大体老舗ワイナリーでナチュラルではないところがほとんどですが、ナチュラルでのおすすめももちろんあります。ドーミローナ(Dormilona)、ウォルシュ&サンズ(Walsh & Sons)、そして同じ西オーストラリア州の最南部、グレート・サザン(Great Southern)にあるブレイヴ・ニュー・ワイン(Brave New Wine)はぜひ試していただきたいワイナリーです。

そして忘れてはいけないのはタスマニアです。本当に上質なものが多く、少量生産のワイナリーがほとんどで、ツー・トン(Two Tonne) 、ストニー・ライズ(Stony Rise)、ドクター・エッジ(Dr Edge)などのナチュラルワインも含め、良いワインに出会える機会はとても多いと思います。
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そして最近のオーストラリアのシャルドネは樽を使わないものが増えているという記事を何個もネットで見かけたのですが、これは少し誤解を与えそうなので自分の意見を言いたいと思います。

タンクで造るものは確かに多く造られていますし、それなりによく見かけます。しかしそういうものは、もちろん全てではないですが比較的安価でそんなに質の高くないものが多いと思います。おそらく全体の統計でいえば増加しているのかもしれませんが、良いものの中にはほとんどないというのが僕の印象です。


やはり美味しいワインを紹介したいですし、大量生産ワインのイメージを払拭したい僕としてはこれは知っておいてもらいたい事です。

ちなみに僕は絶対的に樽を使うことを推奨しているわけではありません。新樽率が高く、やたらと樽香の強いものは好きではありません。やはり古樽でほんのりするぐらいのものが美味しいです。

最後に、おすすめエリアにはしませんでしたが、ニューサウスウェールズ州にも魅力的なシャルドネはもちろんあります。まずはハンターヴァレーのエムアンドジェイ・ベッカー(M&J Becker)、ブルー・マウンテンズでワインを造るフランクリー・ボブ・メイド・ディス・ワイン(Frankly, Bob made this wine)。そしてキャンベラエリア(Canberra)のマラルカ・ワインズ(Mallaluka Wines)などは個人的におすすめするワイナリーです。


〜南オーストラリア州のリースリング〜
オーストラリア最大のワイン産地で有名なワイナリーが数多くある南オーストラリア州の白ワインといえばリースリングだと思います。

シャルドネも、もちろんたくさん造られていて評価の高いものもありますが個人的にはあまり印象にありません。しかし僕の大好きなアデレード・ヒルズのナチュラルワインの造り手たちのシャルドネは別の話です。ジェントル・フォークを始め、オコタ・バレル(Ochota Barrel)、ジ・アザー・ライト(The Other Right)、アーキテクツ・オブ・ワイン(Architects of Wine)など、彼らのシャルドネは別格です。
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via ©️Wine Folly
南オーストラリア州のリースリングといえばクレア・ヴァレーがよく知られています。しかし前にも書いたのですがクレアヴァレーのものの多くは個人的にはドライすぎて酸味を強く感じます。

それなら同じく優良なリースリングで知られるエデン・ヴァレーやバロッサ・ヴァレーの方がバランスがよく、とても好みのものが多いです。例えばスモールフライ(Smallfry)のリースリングは個人的には大好きなワインです。

そしてリースリングはナチュラルな造り手で見るとタスマニアや西オーストラリア州の南部にあるグレートサザン(Great Southern)、キャンベラやヴィクトリアも個人的には好きなワインがたくさんあります。。

タスマニアではシャルドネもおすすめだったツートン、ドクターエッジ、そしてブライアン(Brian)も注目のワイナリーです。グレート・サザンではここもシャルドネでおすすめしたブレイヴ・ニュー・ワイン。キャンベラではマラルカやレイブンズワース(Ravensworth)、マダ・ワインズ(Mada Wines)はとてもおすすめです。



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Ryoji Ohgushi Ryoji Ohgushi

オーストラリア・シドニー在住。2004年からオーストラリアの飲食店でキャリアをスタートし、2008年にオーストラリア永住権を取得。現在はオーストラリアの飲食店のワインリスト作成のコンサルティング業務や日本ワインの卸販売を行い、2020年からwiny.tokyoのオーストラリアワインメーカー発掘のサポートを行う。年間約1500種類のワインを試飲!https://mauvewine.com/